目次
なかにし形成外科クリニックでは下肢静脈瘤の治療に対応します。最新のグルー治療から血管内焼灼術、ストリッピング術、高位結紮術、硬化療法にいたるまですべてに対応可能です。診察、検査にて病状や訴え、血管の状態に最適な治療を選択して提案します。
今回は下肢静脈瘤の治療について詳しくまとめてみました。ぜひご参考に!診察をご希望の方は2022年7月〜保険診療開始しますので、LINE友だち登録をして、開院後に予約してご来院ください。
下肢静脈瘤の病態と症状
下肢静脈瘤の原因になりやすい血管は主に2つ、足の付け根(鼠径部)から太ももの内側を通り、膝下内側に続いている「大伏在静脈」と、膝裏中央から下腿裏面を通り、足首まで続いている「小伏在静脈」です。
根本的な静脈瘤の「病態」は、一言で言うと「静脈の逆流」です。上記2本の血管は末梢から心臓に帰っていく血流を有していますが、血管内部の逆流防止弁が年齢やホルモンバランス、立ち仕事の負荷などで弱くなり、破綻することで血管内で血液の逆流が生じます。結果として、血液が渋滞を引き起こし、膝下で圧が高まり、血管の壁が膨らんでコブになります。
静脈瘤の症状で、もっとも多いのは「こむら返り」に悩まされることでしょう。夜中に足がつって目が覚めることはありませんか?1週間に何度も続くようなら一度調べてみるほうがいいかもしれません。
他にも、「足がだるい」「かゆみ・むずむず感」などの症状が出ることがあります。長期間治療しないでいると、慢性炎症状態を引き起こし「色素沈着」が出てきたり、小さな傷がなかなか治らない「鬱滞性潰瘍」につながることもあります。
静脈瘤で命を落とすことは、ほとんどありません。しかし、高齢者が静脈瘤を発症した場合、上記のような症状のため生活の質は低下し、歩行機能に影響する場合も見られます。足以外はお元気なのに、静脈瘤のせいで車椅子生活を余儀なくされ、そのまま寝たきりへ、という状況にもなりかねません。発見したら、治療をしておくことがよいでしょう。
下肢静脈瘤を治療しないとどうなるの?
足の血管が膨らみ、コブ状に
下肢静脈瘤は名前からイメージできるように、下腿の静脈が膨らみ、コブ状にボコボコと突出してくるような状態です。大伏在静脈という足の付け根くらいから分岐している表在静脈と、膝裏少し上から分岐している小伏在静脈の2本がトラブルを起こしやすい血管です。
人間の血管は「心臓から血液を末梢に送り届ける動脈」と「末梢から心臓に血液を送り返す静脈」の2つが主ですが、下肢静脈瘤でトラブルを起こすのは名前の通り「静脈」です。大伏在静脈も小伏在静脈も足の血液を心臓に戻していく血管であり、重力に逆らって心臓に戻って行くため、血管の中に弁が多数存在しています。
これにより一方通行の流れになり、末梢から心臓に向かって血液が組み上げられて回収されていくようになります。
立ち仕事や肥満、高齢、妊娠後など、静脈弁に負担がかかる状態が続くと弁が破綻して血管の中で血液が一部逆流してしまいます。大腿から徐々に末梢にむけて逆流による負荷が強くなり、膝下あたりから血管への圧力が過剰になり、静脈が膨隆してコブ状に拡張してしまいます。
最初は小さなコブでも放っておくと、徐々に程度がひどくなり、見た目も気持ち悪いくらいの凸凹になります。中にはコブのない静脈瘤のあります。以下に別記事でまとめていますので、興味ある方は読んでみてください。
寝てる間に足がつる(こむら返り)
コブが生じているほどの静脈瘤を有する方は、「夜間のこむら返り」に悩まされていることが多く見られます。静脈鬱滞が続くと筋肉の制御機構に影響が出て、夜間に突然筋肉の過剰緊張が生じ、こむら返りを生じてしまいます。健康な方でも、日中に立ち仕事や運動で足が疲れている日などには夜間こむら返りを起こすことがあります。静脈瘤の方はそれが連続で起きたり、毎晩や2日おきなど頻度が上がります。
私も夜間のこむら返りで時々目を覚ますことがあります。長時間手術や疲労が溜まっているからでしょうか?激痛で本当に嫌になる痛みですよね。
静脈瘤治療を終えた方からよく聞くのは「こむら返り1回の痛みより手術の痛みのほうがよっぽど楽だった」というお話です。こむら返りを頻回に伴う下肢静脈瘤については、良い手術適応と考えています。
足がだるくなって、むくみがひどくなる
それでも放置していると、静脈鬱滞が慢性化してきます。足はだるくなって疲れやすく、だんだん膝下のむくみ(浮腫)がひどくなってきます。靴下の型がかなりくっきり残るような浮腫が出て、皮膚が痒くなってきます。
静脈が血液逆流による逆流を生じ、血管外に水分が漏出して、脂肪などの間質に水がたまってきている状態です。寝ていると足が下にならず、重力の影響が少なくなるので浮腫は改善しますが、日中歩行していると徐々に浮腫がひどくなり、夕方にはパンパンになります。
むくみにより足のサイズが朝と夕方で大きく変わるため、朝履けた靴が帰りにキツくなり、靴擦れなどを生じたりすることがあります。
膝下が黒ずんで、汁が滲み出てくる
慢性的な浮腫が長期にわたって続くと、皮膚の表面の慢性炎症が起こり、かゆみ・ムズムズなどを経て、膝下から足首までが徐々に黒ずんできます。見た目に加えて、皮膚乾燥やかゆみが徐々に増していきます。痒くて掻爬してしまったり、ぶつけて傷がついたりすると、浮腫の影響でその傷から汁がにじみ出てきます。
この辺りになると、普通の健康的な生活が出来なくなってきます。また深部から不全交通枝とよばれる表在静脈へつながる枝の弁不全も伴ってくるため、大伏在静脈や小伏在静脈の治療だけでは完治できなくなってきます。
こういった症状にまで発展した場合は、まずは入院安静をお勧めします。入院で移動量を減らし、下肢にかかる負荷を減らせば必ず一旦治ります。しかし、問題は再発です。一度弁不全を生じた不全交通枝は一筋縄では治せません。弾性包帯や弾性ストッキングなどの保存的治療も組み合わせて、病状に応じた管理を行います。
膝下に自然と傷が生じて治らない
静脈瘤を放置した場合の最終形態は「自然と足に傷が出来てくる」という非常に辛い状況です。弾性ストッキングなどで予防がうまくいっていれば防げるのですが、中には日常の生活負荷が一定レベルを超えると、気付いた時には汁がにじみ出てじわじわと潰瘍が広がってくるような状態になる患者さんがおられます。
中には病院(特に皮膚科クリニックなど)で、創部の消毒処置だけを何年も続けられ、「もう治らないでしょう」などと見放されているケースもあります。触られると痛みが強すぎて、長年処置で痛みを与えられ続け、医療不信になっている患者さんもいます。
個人的な経験で言うと、最も長かった人は20年ずっと治っていなかったという男性の患者さんでした。5年から10年治っていないという人も2−3人います。2−3年治っていないという人は5人以上いると思います。ちなみに全員治りました。鬱滞性潰瘍は、適切な対応さえすれば確実に治せると思っています。
長期に治っていない静脈鬱滞性潰瘍については、患者さんが医療不信気味であることが多いため、最初の診察で「絶対に良くなるから任せてください」と言ってあげることが大切だと感じています。最近の医療ではリスクの説明、合併症の説明などマイナスイメージが先行しますが、こういう医療不信ぎみの患者さんの対応は「信頼関係の構築」が大切なので、最初の数回はそういう関係づくりから始めることが多いです。
静脈鬱滞性潰瘍は時間がかかりますが、地道に治療をすれば治ります。一方で動脈がトラブルを起こした虚血性下肢壊疽は厳しい話になることが多いです。悩んでいる方がいれば、一度ご相談ください。
静脈鬱滞が強い方は「蜂窩織炎」にかかりやすくなります。蜂窩織炎については別記事でまとめています。
瘤の無い「下肢静脈瘤」もある
フットケアに力を入れている当院では、「瘤の無い下肢静脈瘤」が見つかることがよくあります。
たとえば爪白癬や胼胝、外反母趾のお悩みで診療に訪れた患者さんに問診で症状を聞いていると、「足がだるい」「夜間にこむら返りがひどい」「夕方に足がむくむ」という静脈瘤の症状を訴えられることがあります。
見た目には「ボコボコ」とした瘤は無く、一見きれいな足なのですが、確かにむくんでいる感じはします。
そういう患者さんにはその場ですぐにエコーを当てて、大腿内側の「大伏在静脈」と下腿裏面の「小伏在静脈」の2本の血管を見てみます。症状を言われる方であれば、それらの半分以上の方に血管内の逆流所見や静脈の拡張所見が見つかります。
下肢静脈瘤として診断が確定し、治療について相談となります。
そもそもネーミングが微妙
下肢静脈瘤というネーミングは、「ボコボコした足のコブ(瘤)をつくる病気」みたいに思ってしまいます。それは確かにそうなのですが、症状を言い表しておらず、見た目の印象のみを表現した病名であり、患者さんが「静脈のコブがなければ静脈瘤ではない」と勘違いしていることもあります。
下肢静脈瘤の病気の本体は「伏在静脈の内部の弁不全」であり、それによる血液の逆流・鬱血が下肢に浮腫を生じたり、血管を拡張させたりします。逆流して圧が上がれば血管がボコボコと瘤を生じますが、「逆流はあるが皮下脂肪や浮腫も高度で、瘤が無い状態、もしくは目立たない状態」の下肢静脈瘤も多く存在します。
はっきりいって「下肢静脈瘤」というネーミングは微妙です。広く浸透している病名なので今更変えれないでしょうが、病気を的確に表すなら「下肢静脈弁不全症」を大分類として、その下に小分類を「大伏在タイプ」「小伏在タイプ」「不全交通枝タイプ」「深部静脈タイプ」の4タイプに分類するのが妥当じゃないかと思っています。治療方針が4タイプ別に全く異なるからです。
瘤が多くても少なくても、費用は同じ
瘤がボコボコしていない場合の治療も、手術の内容は同じです。当然、治療にまつわる費用も同じになります。
下肢の「こむら返り」や「重だるさ」で悩まされている人は、一度「静脈弁不全」を調べてみることをお勧めします。
早期に治療をしておくことの大切さ
下肢静脈瘤は治療に一刻を争うというような疾患ではありません。ただし放置しておくとじわじわと上記のような経過で増悪してきます。鬱滞性皮膚炎や鬱滞性潰瘍を生じ始めると、不全交通枝まで逆流を生じて治癒が難しくなってしまいます。早期に気づいて、きちんと治療を受けて、弾性ストッキングの着用や生活習慣の改善を行うことで、今まで通りの普通の生活を送ることは可能です。もし静脈瘤かもしれないと思った場合は、時間を作って近くの治療をしている病院で診てもらいましょう。
最新の治療は「グルー治療」「血管内焼灼術」です。これについては以下に詳しく記載しています。
血管内焼灼術(けっかんないしょうしゃく術)
下肢静脈瘤の治療の一つに「血管内焼灼術」という方法があります。皮膚を切らずに針(カテーテル)を刺し、悪くなった血管の中にカテーテルを通すことで治療が可能です。血管内焼灼術はどこの施設でもできるわけではなく、実施認定施設でのみ対応が可能です。症状と治療法、その後のケアについても紹介します。
高周波による血管内焼灼術は、2014年6月に保険適応されたもので、ラジオ波ともよばれます。
血管内に細いカテーテルを通し、高周波の熱を用いて血管内から逆流している「壊れた」静脈を焼いて、内腔を熱損傷させて閉塞させます。カテーテルの先端7cm部分(3㎝のカテーテルもあり)が加熱され、120℃の熱を発生させて、接している血管を焼きます。
治療時間も短く、スムーズにいけば30分程度、血管の穿刺や挿入に時間がかかっても1時間以内でおさまることがほとんどです。
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術では従来のストリッピング手術と比べて、術中と術後の痛みがほとんどありません。術後の内出血もほとんどありません。
血管内焼灼術では、針を使ってカテーテルを静脈内に挿入し治療を行うため、手術後の傷は針の穴だけになります。針穴は小さいので糸で縫合などは行わず、自然に縮むのを待ちます。
ボコボコと膨らんだ静脈瘤の追加切除を行った場合も針穴からstab avulsion法という、瘤を直接部分的に引き抜いてくる手技を行うのでほとんど傷跡が残りません。
手術翌日から普通に仕事ができます。自営業の方や忙しい主婦の方でも気軽に手術を受けることができます。
血管内焼灼術:治療後のケア
<血管内焼灼術のメリット>
治療後5 年で静脈閉塞率が92%という研究結果が報告されています。
- 日帰り手術で対応が可能
- 手術部位の傷跡がほとんど残らない。穿刺の跡のみ。
- 出血がほとんどないので、低侵襲で負担が少ない
- 保険適用されるため、費用が安い(3割負担で4~5万円程度)
- 治療中も治療後も痛みが非常に少ない
グルー治療(接着剤治療)
瞬間剤により逆流を来している病的な静脈を内腔から接着して閉鎖させる治療です。治療メカニズムは、血管内レーザー焼灼術や高周波(RF)焼灼術と同様に、カテーテルを用いてデバイスを病的血管内に挿入し血管を閉塞させて逆流を止めるという方法です。
接着剤を英語でglueと表現することから「グルー治療」と呼びます。
日本では2019年4月に薬事承認され(VenaSealクロージャ―システム 日本メドトロニック)、12月に保険収載されました。
下肢静脈瘤に対する従来の根治治療は、10年ほど前まではストリッピング手術でしたが、少しずつレーザーによる血管内焼灼術やRF(高周波)による血管内焼灼術に進化してきました。グルー治療によりさらに下肢静脈瘤の治療はさらに低侵襲化しました。
グルー治療の最大のメリットは「TLA麻酔が不要」という点です。レーザーやラジオ波による血管内焼灼術では血管内を熱により処理するため、TLA麻酔(血管の周囲にたくさん局所麻酔を注射する)が必要になります。グルー治療は接着剤による閉塞なので、熱刺激はありません。そのためTLA麻酔が不要であり疼痛が大きく緩和されます。
まだ新しい治療なので、長期成績や重症例への効果が十分蓄積されていません。海外の実績は多いのですが、まだ日本に入ってきてからそれほど経過していませんので、安全をみて比較的軽症の静脈瘤が適応となります。
またグルー治療で使う接着剤は体内に吸収されることなく、血管内に残存します。遅延性アレルギーを生じる可能性が(稀ですが)報告されています。重症化すると血管を摘出する必要がでるとも言われています。グルーにアレルギーがある方や、アレルギー体質の方は適さないと言われています。
<グルー治療のメリット>
- TLA麻酔が不要(痛みが少ない)
- 治療後に圧迫ストッキングを履かなくて良い(治療当日から入浴可)
- 治療後の出血、神経障害のリスクが少ない
ストリッピング術
弁不全を起こして逆流している静脈を抜去する方法です。
鼡径部と下腿部の2ヶ所を切開し、弁の壊れた大伏在静脈内にワイヤーを通して、ワイヤーごと血管を引き抜きます。また、必要に応じて静脈瘤の切除も行います。
以前はこの手術が治療の主流だったのですが、現在は血管内焼灼術で治せるようになり保険適応もあるので、ストリッピング術は、血管内焼灼術が適応外の患者さんの選択肢になります。
瘤の血管径があまりに大きい場合など内腔からの焼灼では治療が難しいと判断した場合にこの治療を選択します。
硬化療法
蜘蛛の巣状静脈瘤の治療は、拡張した血管に直接硬化剤を注入して、癒着させ招待させる「硬化療法」の適応になります。
「ポリドカスクレロール」という薬剤を注入して圧迫します。かなり細い血管であれば直接注射を、少し太めの瘤であればフォーム状にして血管内に注入します。
単に注射して圧迫するだけなので、それほど苦痛を伴う治療ではありません。日帰りで十分対応可能です。
弾性ストッキングによる圧迫療法
上記治療後は基本的には1ヶ月間ほど、弾性ストッキングの着用をお願いしています。圧迫を怠ると、残った残存瘤のなかに血栓が生じ、血栓性静脈炎を生じる場合があります。1度生じると、改善するのにかなり時間が必要になります。
1ヶ月弾性ストッキングを着用した後も、長距離移動を伴うお出かけの際はなるべく弾性ストッキングを着用するように指導しています。
実際自分も(静脈瘤ではありませんが)、長時間手術がある日などは弾性ストッキングを履いています。健常人でも立ち仕事が長くなると下腿の血液の淀みが筋層に影響し、夜間にこむら返りを起こすことがあります。静脈瘤がない方にも弾性ストッキングはおすすめです。
先日弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターの認定を取りました。
慢性静脈不全症を伴う静脈潰瘍の患者さんに対しては保険適応で弾性ストッキングを処方することが可能になりました。現状の制度では静脈瘤の手術後の患者さんには、まだ適応にならないので、更に適応拡大を期待しています。
漢方治療(芍薬甘草湯、桂枝茯苓丸)
こむら返りがひどくて悩んでいる患者さんには芍薬甘草湯が「意外に」効きます。血栓既往があったりすると手術したくても適応外になってしまうので打つ手がなくなります。そういった方には芍薬甘草湯と弾性ストッキングを処方して外来通院で経過観察を行います。
下肢浮腫の改善を目的に桂枝茯苓丸を使うこともあります。下肢静脈瘤の治療を担当していると、静脈逆流はないが下肢浮腫のみある患者さんもよく来院されるようになります。リンパ浮腫であったり、心不全や腎不全で内科治療になることもありますが、そのあたりも特に問題ないような原因不明の下肢浮腫は存在します。漢方と弾性ストッキングによる保存的治療も上手く取り入れて対応しています。
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