粉瘤
粉瘤
一般市中病院の形成外科で最も多く目にする相談は、皮膚の「できもの」の治療のことでしょう。ほくろのようなもの、イボのようなもの、しこりのようなもの、色んな形状の「できもの」について相談があります。こういった「できもの」、医学的には「皮膚・皮下腫瘍」と呼びます。
数ある皮膚・皮下腫瘍の相談のなかでも最も多いのが「粉瘤」です。
患者様にはいつも、「皮膚が一部まくれ込みを生じて、袋をつくったもの」と説明しています。イラストで説明します。
中が表面になった皮膚のボールのようなものです。皮膚は代謝されて「垢」を出しますが、それらがボールの内側に溜まっていき、徐々にサイズが大きくなります。5年−10年ほどかけて1cm、2cmとサイズアップしていくものもあれば、ほとんど大きさが変わらないものもあります。
基本的に中に溜まっているものは「垢:いわゆる角質のクズ」なので、切って中身を出すと非常に臭いにおいがします。粉瘤の中央に「へそ」のようなまくれ込みの出口が開口しているときがあり、押し出すと中身が少し出たりします。「臭い汁がでるデキモノ」という訴えの場合は大抵、この粉瘤である場合が多く見られます。
色んな意見があるかもしれませんが、個人的には見つけたら「手術すべき」と考えています。
粉瘤は良性腫瘍ですが、先にも書いたように「腫れ」ます。不思議なもので、大切な用事の前に腫れて病院に受診される患者様がよくおられます。
「結婚式が来月なのに、顔の粉瘤が腫れてきてどうにかしてほしい・・」
「来週ゴルフコンペの主催者なのに、背中の粉瘤が10cm近く腫れ上がって熱がある・・・」
「受験直前なのに、頭の髪の毛の中に粉瘤ができて汁が垂れてきている・・・」
実際に相談があった事例です。一度腫れてしまうと、すぐに完全摘出はできず、切開排膿してから1か月〜2か月間を開けて、「完全摘出術」を行うので、そんなすぐには治療できません。上記のような大切な用事のまえに腫れてしまう「粉瘤あるある」を避けるためにも、気がついたら小さいうちに手術で摘出しておくべきでしょう。
もう一つ早期手術の利点としては、手術のキズが小さくて済むことです。粉瘤は置いておくと大きくなります。当然ですが、大きくなってから摘出すると、術後のキズも大きくなります。小さいうちに小さいキズで治しておくのをお勧めします。
治療は手術が主です。理想的な治療法は、袋を含めて一塊に取ってしまう「完全摘出」です。袋が残ると、そこから再び再発することが多く、せっかく痛い思いをしても、数年後に再び同じ繰り返しを味わうことになります。
どんな状態でも手術で摘出できるわけではありません。真っ赤に腫れている状態では、いったん中身を「切開排出」してから、炎症を沈静化させて、後日完全摘出を行います。
ほとんどの場合に、日帰り手術で対応が可能です。小さいものなら30分程度で終わります。お気軽にご相談ください。参考までに手術費用も以下に掲載しておきます。
K005 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)
K006 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)
術後の処置については、当院では患者様自己にて行えるように「翌日からの処置方法」について記載した説明書きを準備しています。看護師から処置の仕方について、内服や軟膏の使い方について説明を聞いていただき、帰宅となります。
抜糸は1週間くらいで行うことが大半です。関節にまたがる部分やよく動く部分については2週間くらいで行います。外来で麻酔はせずに糸だけ切って抜きます。よく「抜糸は痛いですか?麻酔はしないのですか?」と聞かれますが、抜糸はほとんど痛くないので、心配しないでいいと思います。少し引っ張られる感覚がありますが、子供さんでも泣かずに抜糸できることが多いです。
抜糸後は傷跡にテープを貼って固定してもらうことがあります。これは傷に直接かかる力を分散して、傷跡の広がりを抑えるためです。1週間位貼りっぱなしでもいいのですが、剥がれやすい部位の場合は2−3日ごとに交換してもらいます。部位によってはテーピングしない場合もあります。